に合羽を着、足|拵《ごしら》えも厳重の、一見博徒か口入れ稼業、小兵《こひょう》ながら隙のない、一人の旅人が現われたが、笠を傾けこっちを隙《す》かすと、ピタリと止まって手を拡げた。腹背敵を受けたのであった。ギョッとしながらも甚内は、相手が博徒と見定めると、抜いたままの血刀を二、三度宙で振って見せ、
「邪魔ひろぐな!」
 と叱※[#「口+它」、第3水準1−14−88]した。

    この旅人何者であろう?

 博徒風の旅人は、微動をさえもしなかった。依然両手を広げたまま、地から根生《ねば》えた樫の木のように、無言の威嚇を続けていた。脈々と迸《ほとば》しる底力が、甚内の身内へ逼って来た。強敵! と甚内は直覚した。彼は忽然身を翻《ひるが》えすと、この時間近く追い逼って来た、二人の武士の方へ飛びかかって行った。一人の武士はそれと見るとつと傍《かたわ》らへ身をひいたが、もう一人の武士は足をとめ、グイと拳を突き出した。拳一つに全身隠れ、鵜の毛で突いた隙もない。北辰一刀流直正伝拳隠れの真骨法、流祖周作か平手造酒か、二人以外にこれほどの術を、これほどに使う者はない。「あっ」と甚内は身を締めた。この堅陣
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