の陽《ひ》が窓からさしていた。あけ荷、衣桁《いこう》、衣裳、鬘《かつら》、丸型朱塗りの大鏡台、赤を白く抜いた大入り袋、南京繻子《なんきんじゅす》の大座布団、ひらいたままの草双紙、こういった物が取り乱されてあったが、女太夫の部屋だけに、ひときわ光景がなまめかしい。
「ねえ、お前さん、ねえ吉っあん、ほんとに気色が悪いじゃないか。妾《わたし》アつくづく厭になったよ」
 燃え立つばかりの緋縮緬《ひぢりめん》、その長襦袢《ながじゅばん》をダラリと引っかけ、その上へ部屋着の丹前を重ね、鏡台の前へだらしなく坐り、胸を開けて乳房を見せ、そこへ大きな牡丹刷毛で、ヤケに白粉《おしろい》を叩きつけているのは、座頭《ざがしら》阪東米八であった。年はおおかた二十五、六、膏《あぶら》の乗った年増盛り、大柄で肉付きよく、それでいて姿のぼやけないのは、踊りで体を鍛えたからであろう。肉太の高い鼻、少し大きいかと思われたが、それがかえって役者らしい。紅《べに》をさした玉虫色の口、それから剃り落とした青い眉、顔の造作は見事であったが、とりわけ眼立つのはその眼であって、上瞼《うわまぶた》が弓形をなし、下瞼が一文字を作った、び
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