な船が、どこかの問屋から出はしないか、そいつを調べて来て貰いたい」
「変なご注文でございますね」
「是非今夜中に知りたいのだ」
「ようございます。すぐ行って来ましょう」
 松五郎はとつかわ[#「とつかわ」に傍点]出て行ったが、真夜中になって戻って来た。
「旦那、一隻みつかりました」
「それはご苦労。どこの船だな」
「へい、淀屋の八|幡丸《わたまる》で」
「あ、そうか、それは有難い。……いいから帰って休んでくれ」
 松五郎が帰ると平八は、すぐに変装にとりかかった。髯を剃り、髪を結い変え、紺の腹がけに同じ股引《ももひき》、その上へ革の羽織を着たが、まさに一カドの棟梁であった。
 夜のひきあけに家を出ると、深川の淀屋まで歩いて行った。
「許せ」
 と声だけは武士のイキで、
「俺はな、南町奉行所吟味与力の石本だ、仔細あって犬吠へ行く。ついては八幡丸へ乗せてくれ」
「よろしい段ではございません。ご苦労様に存じます」
 淀屋では異議なく承知した。

 こうして名探索玻璃窓は、江戸から足を抜いたのであった。

    阪東米八と和泉屋次郎吉

 ここは両国の芝居小屋、阪東米八の楽屋であった。
 午後
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