な?」
「なんであなた、大砲など……」
「ふうむ、そうか、これもいけない」
 平八はまたも考え込んだ。
「で、どうだな、海賊どもは、穏《おとな》しかったかな、乱暴だったかな?」
「仲間が五人殺されました」
「いずれ抵抗したのだろうな?」
「敵は大勢、味方は小人数、争ったところで追っ付きません」
「……これもいけない」
 と平八は、呟《つぶや》かざるを得なかった。
 加賀屋を出るとその足で、尚二、三軒廻船問屋を、郡上平八は訪問した。いずれも諸方の近海で、海賊に襲われた手合いであった。しかるに答えはどれも同じで、櫓格子《やぐらごうし》は黒塗りであり、帆の形も尋常であり、大砲などは備えていず、海賊どもは乱暴で、武士的などとはいわれない。――と、こういう返辞であった。
「解った」
 と平八は自分へいった。「この海賊は赤格子ではない。手口を見れば明らかだ。他の奴らに相違ない。……さて、では肝腎の赤格子は、いったいどこにいるのだろう?」
 かえって見当がつかなくなった。
「それはとにかく、腹が減った。きょうは少々動き過ぎたからな」
 で、平八は駕籠を返し、手近の縄暖簾《なわのれん》へ飛び込んだ。

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