こんなことは彼にとって、ちっとも珍らしいことではない。
彼の前に職人がいた。威勢のいい江戸っ子で、扮装《みなり》の様子が船大工らしい。
「おお初公、変じゃないか、どう考えても変梃《へんてこ》だよ」
一人の職人がこういった。
と、もう一人が、それに応じた。
「うん、まったく変梃だなあ。なんと思って選《よ》りに選って、船大工ばかりを攫《さら》うのだろう」
二人の職人の耳寄りな話
「はてな」
と平八は胸でいった。「おかしな話だ。なんだろう?」
で、捨て耳を働かせ、職人の話に聞き入った。
「喜公《きいこう》も消えたっていうじゃねえか」
「それから松ヤンもなくなったそうだ」
「平河町の政兄イ、あそこでは一時に五人というもの、姿がなくなったということだぜ」
「ところがお前《めえ》、石町では、親方がどこかへ行っちゃったそうだ」
「天狗様かな? お狐様かな?」
「天狗様にしろお狐様にしろ、船大工ばかりに祟《たた》るなんて、どうでも阿漕《あこぎ》というものだ」
「見ていや、今に、江戸中から、船大工の影がなくなるから」
「亭主、いくらだ?」
と代を払って、郡上平八は外へ出た。
「
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