ったのは、他でもないこの俺だ。その人数に見張られるとは、なんという矛盾したことだろう」
 止どまっていることは破滅であった。しかし脱出は不可能であった。ではいったいどうしたらいいのか?

 銀之丞の様子の変ったことに、彼らが気づかない筈がない。
 ある夜丑松と九郎右衛門とが、九郎右衛門の部屋で囁《ささや》いていた。
 何をいったい囁き合ったのか? 何をいったい相談したのか? それは誰にもわからなかった。とはいえ、いずれ恐ろしいことが、囁きかわされたに相違ない。その証拠にはその夜以来、銀之丞の姿が見えなくなった。空へ消えたのか地へ潜ったのか、忽然姿が消えてしまった。
 しかも邸内誰一人として、それを怪しんだものがない。もっとも彼らはその夜遅く、金属製の大きな戸が、深い深い水の底で、重々しく開くような音を聞いた。
 が、誰一人それについて、噂しようともしなかった。
 で、邸内は平和であった。無為《むい》に日数が経って行った。
 全く不思議な邸ではある。
 だが銀之丞はどうしたのだろう? いずれは恐ろしい運命が、彼を見舞ったに相違ない。はたして生きているだろうか? それとも死んでしまっただろ
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