黄袋《きぶくろ》、玻璃に載せられた朝鮮人参、オランダ文字の異国の書籍、水盤に入れられた真紅の小魚……もちろんいちいちそれらの物が、一巡見渡した銀之丞の眼に、理解されて映ったのではなかったけれど、しかし決して夢ではなく、まさしく「実在」として映ったのであった。
奇妙な老人の奇妙な話
「いったいこの部屋は何んだろう? この老人は何者だろう?」銀之丞は茫然と、驚き呆れて佇んでいた。
と、老人が声をかけた。
「待っていたのだ。よく来てくれた。ところでお前は本人かな? それともお前は代理かな?」
いうまでもなくこの言葉は、銀之丞にはわからなかった。すると老人がまたいった。
「本人なら市之丞と呼ぼう。もし代理なら別の名で呼ぼう。黙っていてはわからない」
「いや」と銀之丞はようやくいった。「市之丞ではございません。そんな者ではございません。……」
「ふん、それなら代理だな。それは困った。代理は困る」
「全然話が違います。……刎ね橋が下ろされてありましたので……」
「そうさ、お前を迎えるために、わざわざ下ろして置いたのだ」
「いえ、それに小門の戸も……」
「いうまでもない、開けて置いた
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