よ。それは最初からの約束だからな」
「……それでうかうか参りましたので」
「ナニうかうか? 不用心な奴だ」
「と、いいますのもその不用心を、ご注意しようと存じましてな。……」
「うん、それがいい、お互いにな。不用心は禁物だ。……で、お前は代理なのだな? やむを得ない、我慢しよう。……で、お前の名は何んというな?」
「さよう、拙者は銀之丞……」
「ナニ銀之丞? よく似た名だな。市之丞代理銀之丞か。なるほど、これは代理らしい。よろしい、話を進めよう」
「しばらく、しばらく。お待ちください!」
「えい、あわてるな! 臆病者め! ははあ、お前は恐れているな。いやそれなら大丈夫だ。家族の者は遠避けてある。そこで話を進めよう。だがその前にいうことがある、なぜお前達は俺を嚇した! あんな手紙を何故よこした! 何故この俺を強迫した!」
「俺は知らない!」と銀之丞は、とうとう怒って怒鳴りつけた。「人違いだよ、人違いなのだ」
「ナニ人違いだ? 莫迦をいえ! 今さら何んだ! 卑怯な奴だ! だがマアそれは過ぎ去ったことだ。蒸し返しても仕方がない。しかし俺はいっとくがな、以後強迫は一切止めろ! そんな事には驚か
前へ
次へ
全324ページ中156ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング