べっぴん》だった。さて、恋が初まるかな。こんな事から恋が初まる? あり得べからざる事でもない」
 その時庭の飛び石を渡り、お品がはなれへ近寄って来た。色は浅黒いが丸顔で、眼は大きく情熱的で、そうして処女らしく清浄な、すべてが初々《ういうい》しい娘であったが、手に茶受けの盆を捧《ささ》げ、にこやかに笑いながら座敷へ上がった。
「お茶をお上がりなさいませ」
「ああお茶かね、これは有難い。旨《うま》そうなお茶受けがありますな」
「土地の名物でございますの」
「ふうむ、なるほど、海苔煎餅《のりせんべい》」
 お品はいそいそと茶を注いだ。
 豪農というのではなかったが、お品の家は裕福であった。主人夫婦も人柄で、しかもなかなか侠気があり、銚子の五郎蔵とも親しくしていた。銀之丞が頼むと快く、すぐにはなれを貸したばかりか、万事親切に世話をした。ひとつは銀之丞が江戸で名高い、観世宗家の一族として、名流の子弟であるからでもあったが、主人嘉介が風流人で、茶の湯|活花《いけばな》の心得などもあり、謡の味なども知っていたからであった。
 お品は一人子で十九歳、肉体労働をするところから、体は発達していたが、心持ち
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