やろう」「その代り理由《わけ》を話しましたら、鼓は譲って戴けましょうね」「胸に落ちたら譲ってやろう」「へえなるほど、胸に落ちたらね。……どうもこいつア困ったなあ。胸に落ちる話じゃねえんだから。……ええままよ話しっちめえ、それで譲って戴けなかったら、ナーニもう一度盗むまでだ。……世間の黄金《こがね》を手に入れるために、鼓が必要なのでございますよ」「世間の黄金を手に入れるため?」「ハイ、江戸中の黄金《こがね》をね。ナニ江戸だけじゃ事が小せえ。日本中の黄金《かね》を掻き集めたいんで」「鼓が何んの用に立つな?」「名鼓は金気《きんき》を感じます。ポンポンポンポンと打っていると、自然と黄金のあり場所が、わかって来るのでございますよ」
 これを聞くと銀之丞は、しばらくじっと打ち案じていたが、
「さては貴様は鼓賊だな」忍び音で叱※[#「口+它」、第3水準1−14−88]した。
「へい、お手の筋でございます」
「ううむ、そうか、鼓賊であったか」
「相済みませんでございます」
「おれに謝《あやま》る必要はない」銀之丞は笑ったが、「どうだ鼓賊、儲かるかな?」
「一向不景気でございます」
「そうでもあるまい。
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