もとでいらずだからな」
「が、その代り命掛けで」
「だから一層面白いではないか」
「これはご挨拶でございますな。相変らずの観世様で」
「ところでお前は知っているかな、あの有名な『玻璃窓』が、お前の後を追っかけているのを」
「へい、今夜も追っかけられました」
「貴様、今に取っ捉かまるぞ」
「いい勝負でございます」
「なに、いい勝負だ、これは面白い。で、どっちが勝つと思うな?」
「とにかく今は私の勝ちで。……あすのことは判りませんなあ。……ところで鼓は頂けますまいかな?」
「さあそれだ」と銀之丞は、皮肉な笑を浮かべたが、「鼓賊であろうがあるまいが、おれには何んのかかわりもない。金を盗もうと盗むまいと、それとておれには風馬牛だ。ところで少納言の鼓だが、たとえ名器であるにしても、一旦賊の手に渡ったからは、いわば不浄を経て来たものだ。伝家の宝とすることは出来ぬ。なあ千三屋、そんなものではないか」
「へい、そんなものでございましょうな」
「と云ってお前へ譲ることは出来ぬ」
「え、どうでもいけませんかな」
「ただしおれには不用の品だ。捨てるによって拾うがよい」
鼓をひょいと地へ置くと、ギーと潜り戸
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