寧にあつかう[#「あつかう」に傍点]でございましょう」
「南蛮寺の裏の貧しい家に、住居《すまい》をしているということだ」
またも浮木は云い出した。
「で慇懃に訪れて、事情を詳しく話すがいい」
「承知いたしましてございます」こう答えたのは銅兵衛である。
「唐姫様が仰せられた、お前達ばかりをやった[#「やった」に傍点]日には、人相が悪く荒くれてもいる、恐らく民弥という若い娘は怯えて云うことを聞かないだろうと。で妾《わたし》も行くことになったが、憎い信長の管理している、京都の町を見ることは、この妾としては好まないのだよ」
「ご尤も千万に存じます」頷いたのは三郎太で「しかし我々が長い年月、心掛けていました南蛮寺の謎が、解かれることでございますから……」
「そうともそうともその通りだよ。だから妾も厭々ながら、京都の町へ行くというものさ。……が民弥という娘ごが、この私達の云うことを、順直《すなお》に聞いてくれないことには、その謎も解くことは出来ないだろう」
「もし民弥という娘ごが、不在でありましたら如何《いかが》したもので」不安そうに聞いたのは銅兵衛であった。
「さあそれが心配でね」浮木の声は心
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