て、違ったというので? さようさよう、大違いで、間違いますなあ、よく間違う! アッハッハッハッ、こう間違っても困る。……左様でございますともご家臣で、信長公のご家臣で。蘭丸《らんまる》様の兄様で。……オットいけないまた違ったか。従兄弟《いとこ》でございますよ、従兄弟々々々……ところで昨日でございますがな、午後から参ったのでございますよ。ハイハイ私の屋敷へな。……え、違うと仰有《おっしゃ》るので? いかさまいかさま、これも間違い。間違いに相違ありませんとも。昨日《きのう》は一日お嬢様のお家で、くらしたはずでございますからなあ。……実は先刻《さっき》方参りましたので。へいへい私の屋敷へな。で、只今も居りますので、そうして右近丸が申しました、貴女《あなた》に是非とも逢いたいとな。……ええと所でお嬢様、何と仰有いますな、お名前は? へい貴女のお名前なので? お菊さんかな? お京さんかな? ……何々民弥? 民弥さんというので? そうそう民弥さんに相違ない。……云っているのでございますよ。是非民弥さんに逢いたいとな。そこで私が来ましたんで、ハイハイ貴女をお迎いにな。……さあさあ急いで参りましょう。
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