! お父様!」
「静かになされ、静かになされ!」と。……
30[#「30」は縦中横]
処女造庭境とは何物であろう?
衣笠山から小北山、鷹ヶ峰から釈迦谷山、瓜生山から白妙山、その方面の山林地帯へ、種々様々の迷路を設け、またいろいろの防禦物を作り、都の人間を入れないように、造を構えた地域であって、特に男性を入れないようにしたのと、それを作った頭なるものが、美しい処女であったのとで、処女造庭境というような、物々しい名をつけたまでで、特別の境地ではなかったのである。つまり自然を利用した、一個の広い砦なのであった。
その頭は何という女か? 唐姫《からひめ》という女である。その唐姫とは何物であるか? 織田信長に滅ぼされたところの、某《なにがし》大名の息女なのである。で、父の仇を討とうがため、すなわち信長を討とうがため、都近くのそんな所へ、そのような自然的砦を設け、旧《もと》の家臣を庭師風に仕立て、一緒に住んで虎視眈々、様子を窺っていたのである。
で、ここは処女造庭境の神明づくりの社の前である。
二人の男女が縛られて、大地の上に据えられている。
猪右衛門《ししえもん》とそうして玄女《
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