いて進み出たのは、人買の頭の桐兵衛であった。
「民弥、猿若、もう駄目だ! 穏《おとなし》く従いて来るがいい。アッハッハハ飛んでもない奴等だ、そんな小供や小娘に、裏掻かれるような俺達なら、とうの昔に縛られている……さあさあ帰れ従いて来い。……民弥にはおりよく買手が付いた。売るからその意《つもり》でいるがいい、……ところでチビの猿若だが、呆れた真似をしおったなあ。香具師と人買とは仲間のようなものだ。その仲間を裏切ってよ、仕事の邪魔をやるなんて、交際《つきあい》を知らねえにも程がある。そういう悪い小倅には、それだけの仕置をしなけりゃアならねえ。佐渡か沖の島か遠い所へ、こいつも小僕《こもの》として売ってやる。……さあお前達!」と云いながら、手下の人買を見廻したが、「こいつら二人を引っ担いで行け!」
「さあ来やアがれ!」と五六人の人買が民弥と猿若とへ飛びかかった。
「何だい何だい悪者め!」こう呶鳴《どな》ったのは猿若である。
「来やがれ来やがれ、叩っ切って見せる」
そこで懐刀を振り廻したが、疲労てはいるし敵は大勢、到底勝目はなさそうであった。
民弥に至っては尚更である。立っているさえ苦しい程
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