?」
「二|板《はん》の橋」
「これすなわち二板橋、何ゆえに二板の橋というや?」
「明末《みんまつ》に清《しん》これを毀《こぼ》ち、なおいまだ修せられず」
「何んの木の橋ぞ?」
「否々これ樹板にあらず、左は黄銅、右は鉄板」
「誰かこれを造れるものぞ?」
「朱開、及び朱光の徒」
「二板橋の起原|如何《いかん》?」
「少林寺|焚焼《ふんしょう》され、五祖叛迷者に傷害《しょうがい》されんとするや、達尊爺々《たつそんやや》験を現わし、黄雲を変じて黄銅となし黒雲を変じて鉄となす」
 こんな塩梅《あんばい》の言葉であった。はたして会員か会員でないかを、問答によって確かめたのであった。またも人影が産まれ出た。同じような陣形であった。門前で問答が行われた。続々人影が現われた。みんな門前へ集まって来た。そのつど問答が行われた。
 銅銭会員三百人が、すっかり門前へ集まったのであった。
 と、五、六人の人影が、スルスルと塀の上へ上って行った。音もなく門内へ飛び下りた。門を開けようとするのであろう。だが門は開かなかった。そうして物音もしなかった。人は帰って来なかった。何んの音沙汰もしなかった。
 いつまでも寂
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