るがために不具者達は、僻み心を起こすのです。だから私としてはこういうことが云えます。健全な肉体の持ち主こそ、かえって心は不具者で、不具な肉体の持ち主こそ、その心は健全であるとね。そこで私は考えたのです。不具者ばかりを寄せ集め、一つの独立した社会を作ろう、そうしてそういう人達に、思う存分働いて貰い、私の研究をつづけて行こう。……と、こんなようにお話ししたら、この昆虫館の組織なるものが、奇もない変もない合理的なものだと、きっとあなただって思われるでしょうな。そうしてそれはそうなのですよ。……さてところで私の研究ですが、これとて何んでもありゃアしません。私の好きなは昆虫なので、その昆虫の生活状態を、科学的に徹底的に研究してみよう、そうしてその結果法則を見出し、それが人生に必要なものなら、早速人生に応用してみよう。――と云うぐらいなものなのでね。……この試みは成功でした。蜂と蟻との集団生活、この二つを知ることによって、理想的人間の生活の、法則を知ることが出来ましたよ。で、その中あなたへも、お話ししようとは思っていますが、一口に云えばこうなるようです。王への忠誠、公平の労働、完全の分業、協同的動
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