しかしその時意外の事件が、忽然として勃発した。
まず凄じい鬨《とき》の声が起こり、つづいて太刀音が消魂《けたたま》しく起こり、一ツ橋勢の一角が、見る見る中に崩されたのである。
田安家の武士達が到着し、一ツ橋勢の横手から、この時切り込んで来たのである。
こうして一層の混戦が、展開されることになった。
と、その混戦の場を抜き、一挺の駕籠が飛んで来た。
衆に守られた冷泉華子、それの前から数間の手前、そこまで来た時駕籠が止まり、スルスルと現われたものがある。
「華子さん!」と云ったが妙子であった。「貰いに来ましたよ、桔梗様を!」
「妙子さんか!」
と冷泉華子は、驚いたように進み出たが、「勝手に連れて行くがいいよ。妾は知らぬよ。その生死は!」
「ついでに貰うものがある」妙子は一足踏み出したが、「永生の蝶さ! こっちへおくれ!」
「駄目だよ!」と華子は突っ刎ねた。「お気の毒だが上げられないよ」
「取って見せるよ。腕ずくでね」
「面白いねえ。取れたらお取り」
「どれ」
と云うと北王子妙子は、腰の辺《あた》りを探ったが、ヒュ――ッと何物かを空へ投げた。
小さな小さな二つの車輪、そい
前へ
次へ
全229ページ中183ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング