#「つく」に傍点]だろう。そうして口までつく[#「つく」に傍点]だろう。鼻までつい[#「つい」に傍点]たら最後である。
 岩壁へもたれた小一郎は、「無念! 駄目だ! 俺は死ぬ! あッあッあッ、溺死する! ……桔梗様アーッ」と呼ばわった。
「そうだ桔梗様はどうしているだろう? 恐ろしい恐ろしいその館、ここに囚われている限りは、ロクな目に逢ってはおられまい! 命のほども危ぶまれる! 助けなければならない、助けなければならない! 桔梗様アーッ」と呼ばわった。
 考えがグルグル渦を巻く。その間も滝は落ちて来る。ズンズンズンズン水が増す。
「出なければならない、この部屋から! ……助けなければならない、桔梗様を! ……だが出られない! 助けることも出来ない! ……桔梗様! 桔梗様!」
 ザ――ッ、ザ――ッと落ちる水! 次第にまさる水の量!
 一式小一郎はこの部屋で、溺死しなければならないだろう。
 だが本当に桔梗様は、この頃何をしていたろう?

        三十六

 ここは華子の錬金部屋である。床へペッタリくず[#「くず」に傍点]折れて、身悶えしているのは桔梗様である。袖で顔を蔽うている。
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