逃げることは出来ない! だがこうしてはいられない! まごまごしていると溺死する! どんなことをしても逃げなければならない! どんなことをしても出なければならない!」
 で、一式小一郎は、扉の方へ走って行った。水が股までつい[#「つい」に傍点]ている。足を取られてヨロヨロする。扉を押したが揺るごうともしない。
「どこかにないか! どこかに出口は!」
 で、一方の岩壁へ走った。叩いたが岩壁は動かない。ツルツルしていて足がかりもない。
 もう一方の岩壁へ走って行った。やはり叩いたが動かない。もう一方の岩壁へ走って行った。やっぱり駄目だ。打っても叩いても、岩壁は微動さえしなかった。
 どっちの壁を叩いても、微塵《みじん》動こうとはしないのである。そうしてどの壁も垂直であり、手もかからなければ足もかからないで、岩壁をよじ上り、窓まで行くことも出来なかった。
 ザ――ッ、ザ――ッと水が落ちる。見る見るその水が量を増す。腰までつい[#「つい」に傍点]た。腹までつい[#「つい」に傍点]た。ととうとう胸までつい[#「つい」に傍点]た。
 間もなく首までつく[#「つく」に傍点]だろう、すぐに顎までつく[
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