樋なのであるが、それを伝って岩組の建物――すなわち華子の垢離《こり》部屋なのであるが、その中へ落ち込んでいるのであった。
崖の一角へ足場を定め、窓から垢離部屋を覗き込みながら、叫びを上げている武士がある。他ならぬ南部集五郎であった。
「三尺になるのも間もあるまい! 四尺になるのも間もあるまい。五尺六尺となるだろう。部屋が滝の水で一杯になろう、と窒息だ! すなわち溺死!」さも愉快そうに叫んでいる。
垢離部屋の中に武士がいる。囚われた一式小一郎である。
大水が頭上から落ちて来る。部屋の扉は閉ざされている。逃げ出すことは絶対に出来ない。水の疏口《はけぐち》も閉ざされたのだろう。部屋の中の水は増すばかりである。
窓から外光が射している。青々とした月光である。で岩組の垢離部屋の中が、幽かながらも朦朧と見える。
「鎖鎌で刀を捲き落とされた。そこを大勢に組み付かれた。二、三人投げたがおっつかなかった[#「おっつかなかった」に傍点]。手を取られ足を取られ、担ぎ上げられたと思ったら、ドンとこんな部屋へ投げ込まれた。……水が落ちて来る! 水が湛《た》まる! 天井は高い! 窓も高い! 扉が開かない!
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