父様が、手放してしまったのでございます。……雌雄二匹の永生の蝶々、只今どこにおりますや、存じませんでございます。……」それから嘆願するように、「叔父様が待っておりましょう、家へお帰しくださいまし。妾何んにも悪いことなど、致した覚えはございません。どうぞ虐《いじ》めないでくださいまし。本当に知らないのでございます。何んにも知らないのでございます。決して嘘など申しません。どこに蝶々がおりますやら、本当に知らないのでございます」
偽りのない態度である。偽りのない云い方である。そうして沈着《おちつ》いた様子である。
しかしそういう一切のものは、反対に見れば反対にも見られる。すなわち図太く見られるのである。
女方術師冷泉華子はどうやら反対に見たらしい。
「嘘をお云いよ!」と一喝した。とたんに引いたは黄金の杖で、斜めに上げると釜の中へ、再びボーンと突っ込んだ。引き上げると滴る水銀色の滴! と、その滴をしたたらせたまま、ズーッとその先を突きつけた。「お云い!」と云ったが憎さげである。「一匹逃がしたのは本当らしい。それを手に入れたのがこの妾だ! で、それは信じよう。盗まれたなどとは信じられない。
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