い》異う。角形のもの、円形のもの、菱形のもの、円錐形のもの、八角形のものもある。そうしてその色も異っている。ある壺は紫色を呈している。ある壺は青磁色を呈している。
 薬を盛った壺らしい。
 薬棚の前、釜の横、そこに彫像が立っていた。等身大の像である。まるで生身の人間のようだ。そんなにも活々とした像なのである。今にも物を云いそうである。しかし唇は結ばれている。唇の色の美しさ! 紅を塗ったように紅である。だが顔色は蒼白い。端麗な女の顔である。開いたらどんなに美しかろう? そう思われるような両眼が、軽く軟かく閉ざされている。棘のように高い鋭い鼻、それはむしろ兇相である。肩へかかった髪の黒さ! いや黒いのは髪ばかりではない。着ている衣裳も漆黒である。が形は日本風ではない。胸に刺繍が施してある。裾にも刺繍が施してある。袖は長く指先を蔽い、その形は筒形である。道教の奉仕者方術師、その人の着るべき道服なのであった。すなわちそこにある彫像は女方術師の彫像なのであった。片手に杖を持っている。何んとそれは黄金ではないか! 黄金の杖を持っているのである。
 美しい女の像ではあるが、全体に凄く幽鬼的で、ゾッと
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