っていたが、やがて前仆れに転がった。
もうこの頃には小一郎は、刀をグルリと背後へ廻わし、元の位置へ返ってひそまっていた。
「おいどうした?」
と云う声がして、二人目の人影が現われた。
「つまずいたのか? 転んだのか? 生地《いくじ》がないなあ、起きろ起きろ」
トンと立ち止まって同僚の死骸を――死骸とも知らず見下した時、全く同じだ、小一郎は、一歩踏み出すと、肘を延ばし、颯《さっ》と一刀横っ払った。これも同じだ、首を刎ねられた敵は、そのまま一瞬間立っていたが、すぐ前仆れにぶっ[#「ぶっ」に傍点]仆れた。
「あッ」と叫んだは三番目の武士で、「曲者でござる! 狼藉者でござる!」
身を翻えして逃げようとした。
猛然と飛び出した小一郎は、全身を月光へ浮かべたが、
「騒ぐな」
と抑えた辛辣の呼吸! とたんに太刀を振り冠り、脳天からザックリと鼻柱まで、割り付けて軽く太刀を引いた。
プーッと腥《なまぐさ》い血の匂い! その血の中に三つの死骸が、丸太ン棒のように転がっている。
見下ろした一式小一郎は、ブルッと体を顫わせたが、血顫いでもあれば武者顫いでもあった。
「さあ三人、これで退治た、…
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