が少なくて高いんだ。ところがどうだろう凄いような美人が、俺等の邪魔でもするように、先廻りをして買い占めるじゃァねえかそうだよ染吉の朱盆をな、こいつ怪しいと思ったので俺等ドンドン後をつけてみた。すると今度はその女が植甚の店先へ立つじゃァねえか! 知っているだろうが卸問屋だ。うん有名な錦絵のな。ところが一枚死絵があった。それが[#「あった。それが」は底本では「あったそれが」]素晴らしい出来栄なのだ。わけても[#「出来栄なのだ。わけても」は底本では「出来栄なのだわけても」]紫色が素晴らしかった。解った[#「素晴らしかった。解った」は底本では「素晴らしかった解った」]と俺は手を拍とうとしたよ! あの紫色は血で描いたものだ! 血という奴ァはじめは赤い。それから[#「赤い。それから」は底本では「赤いそれから」]褐色《かばいろ》になり緑色になる。そうして終に紫色になる。そいつも並の紫じゃァねえ。何んともいえねえ紫だ! ところで死絵は紅毛人どもが今大変な高い金でドンドンドンドン買い入れている。ははあさてはいよいよ以て、悪い奴等がどこかにいて、人間の生血を絞っては、それで死絵をこしらえているな! そうし
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