だ」
 真ッ先にこういったものである。
 それから又もトロトロと眠った。
 すっかり元気が恢復すると、またノッケにいったものである。
「支那の古事にあるっていうが、ありゃァ日本の纐纈《こうきつ》城だなあ」
 で、それから話し出した。
「半九、お前にゃァ何んといっていいか、半分はお礼、半分は怨みだ。……俺等お前の話を聞くと、ピシッと心に響いたことがあった。染吉の朱盆の真紅の色と、染吉の衰死という奴さ! ……こいつァ紅毛人の話だが、或る画家がいい色を出すため、自分の体から血を取って、絵具がわりに使ったというが、ははあそれでは染吉という男も、朱盆にそいつを使ったかもしれねえ。朱盆がマア、それはそれとして、俺の手掛ている難事件、いい若い者が姿をかくし、帰って来ると衰死してしまう、こいつに宛てはめたらどうだろうとな? どこかに悪い奴が屯していて、人間の生血を、絞るんじゃァないかな? ……で俺は出かけたってものさ。染吉の朱盆を手に入れてみよう、そうしてそいつを蘭医にでも頼んで、血が雑っているか雑っていないか、真ッ先に調べて貰うことにしよう。朱盆さて古道具屋へ行ってみたが、思うように手に入らねえ。数
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