ます。ご案内いたすでござりましょう。どうぞ輿へお召しくださりませ」
 こう繰り返して云うばかりであった。
「お前に迎えられる理由はないよ」
 茅野雄は少しく腹立たしくなった。
「案内すると云うが、俺《わし》の行く先を知っているかな?」
 老人の言葉は同じであった。
「お迎えに参りましてござります。ご案内いたすでござりましょう。どうぞ輿へお召しくださりませ」
「俺《わし》はな」と茅野雄は苦笑しながら云った。
「先刻《さっき》は高山へ行くとは云ったが、ほんとうの行く先は高山ではないのだ。高山からさらに十里離れた……」
 しかしこのように云って来て、不意に茅野雄は口を噤《つぐ》んだ。
(迎えに来たというからには、案内しようというからには、俺の行く先を知っていなければ嘘だ、……と云って知っているはずはない。よしよし一つからかって[#「からかって」に傍点]やろう)
 で、茅野雄はわざと慇懃《いんぎん》に云った。
「せっかくのお迎えでござるゆえ、遠慮なく輿に乗りまして、行く先までご案内をお願いしましょう。が、只今も申した通りに、貴殿方には拙者の行く先を、ご存じないように存じますよ。それともご存じで
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