、狭い方の道の一本から、ノッソリと姿を現わした。かるさん[#「かるさん」に傍点]を穿いて筒袖を着て、樵夫《そま》と見えて背中に薪木をしょって、黒木の杖をついていた。
「ああこれ爺《おやじ》ちょっと訊きたい」
茅野雄はそれと見てとって、確かめて見ようと思ったのだろう。後戻りをして声をかけた。
「高山のお城下へ参るには、この道を参ってよろしかろうかな?」
こう云って広い方の道を指した。
と、老樵夫は冠り物を取って、コツンと一つ頭をさげたが、つくづくと茅野雄の顔を見た。
「へい、高山へいらっしゃいますので」
「さよう、高山へ参る者だ。この道を参ってよろしかろうかな?」
「…………」
どうしたのか老樵夫は物を云わないで、何か物でも探るように、茅野雄の顔を見守った。
大きい眼、高い鼻、田舎者らしくない薄い唇、頬の肉がたっぷり[#「たっぷり」に傍点]と垂れていて、わずかではあったが品位があった。年格好は五十五六か、顔の色は赧く日に焼けていたが、かえってそれが健康そうであり、額や頤に皺はあったが、野卑なところは持っていなかった。――これが老樵夫の風貌であって、注意して観察を下したならば、単
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