に謳われている松平|碩寿翁《せきじゅおう》その人なのであった。
(立派な人物が二人まで揃って、面白い話を話して行く。高価な品物とはどんなものだろう? 両眼とは何の両眼なのであろう?)
茅野雄は好奇心に心を躍らせて、尚も二人をつけ[#「つけ」に傍点]て行った。
(それにしても極東のカリフ様とは、一体どういう意味なのであろう?)
これが茅野雄には疑問であった。
ただし長崎におった頃、茅野雄は蘭人の口を通して、カリフという言葉と言葉の意味とを、一再ならず耳にはした。マホメットという人物を宗祖として、近東|亜剌比亜《アラビア》の沙漠の国へ興った、非常に武断的の宗教の、教主であるということであった。
で、これはこれでよかった。
しかし極東の教主《カリフ》という、極東の意味が解らなかった。
(日本のことを極東というと、蘭人からかつて聞いたことはある。では極東の教主というのは、日本におけるマホメット教の、教主というような意味なのであろうか? ではいつの間にか日本の国へもマホメット教が渡来したのであろうか?)
そう思うより仕方がなかった。
(それにしても一ツ橋慶正卿がそのカリフとは驚くべき
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