ちろん値打ちを知らない者には、変わった単なる石ッころ[#「ころ」に傍点]として、無価値の物に映るであろうが、知っている者には宇宙にも見えよう」
「これは極東のカリフ様の、お言葉の通りにござります。両眼の価値を知りました者には、宇宙にもあたるでござりましょう。が、幸いにもこの国には、ああいう物の偉大な価値を、知っておる者は少ないようで」
「いやいやそうでもなさそうだよ。わし[#「わし」に傍点]も知っていればお前も知っている」
「さあその他にございましょうかしら?」
「あの品物がこの国へ渡って、五年になると云うことだが、いまだに行衛《ゆくえ》がわからない。――ということから推察すると、われわれ二人以外の者で、あの両眼の素晴らしい価値を、知っている者が確かにあると――そう云うことも云われそうだよ」
「と、申しますと何者かが、あの品物を隠して持っている――と、このように仰言《おっしゃ》いますので?」
「さよう、わし[#「わし」に傍点]はそう思う」
「その反対とも申されましょう」
「はてな、それはどういう意味かな?」
「無価値な品物と見きわめ[#「きわめ」に傍点]られて、古道具屋の店先などに、転
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