いよ欲しくなります」
「で、貴殿にはここへ出張られて、狙いを付けておられるので」
「さよう、貴所《きしょ》様と同じようにな」
「誰が最初に手に入れるやら。まず愚老でござろうな」
「はてね、少しあぶないもので。某《やつがれ》が勝つでござりましょうよ」
「愚老の方が眼が高い」
「が、某といたしましては、彼の故国を知っております」
「ほほう。亜剌比亜《アラビア》をご存知なので」
「いかにも某存じております」
「ふうむ」と老武士は呻き声を上げたが、すぐに、そいつ[#「そいつ」に傍点]を引っ込ませると、別のことを云い出した。
「愚老の方が財力がある」
すぐに中年の武士が答えた。
「健康はいかがで健康はいかがで? 某の方が健康で厶」
「が、愚老には権勢がある」
「某にも権勢はござりますよ」
「どのような種類の権勢やら」
「命知らずの部下がおります」
「浪人であろう。食い詰め者であろう」
「もっともっとあくどい[#「あくどい」に傍点]奴らで」
「ほほうさようか、何者かな?」
「放火《つけび》、殺人《ひとごろし》、誘拐《かどわかし》、詐欺――と云ったような荒っぽいことを、日常茶飯事といたしている、極
前へ
次へ
全200ページ中43ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング