俺は主人だ! 主人の云い付けなら聞かなければなるまい! どうしても見せないと云うのなら、俺が腕ずくで取ってみせる!」
で、包物を両手で握った。
「旦那様、いけませんいけません!」
取られてたまるか[#「たまるか」に傍点]というように、京助は、包物を益々しっかりと、両手で、胸へ抱きしめたが、
「泥棒! 泥棒!」と声を上げた。
胆を潰したのは勘右衛門であって、呆れたように眼を見張ったが、すぐに激怒に駆り立てられたらしい。
「泥棒だと※[#疑問符感嘆符、1−8−77] 馬鹿者め! 何をほざくか! 奥の品物を見ようとするのだ! 奥の品物なら俺の物! 取って見たとて何が泥棒だ! ……ははあいよいよ怪しいわい! そうまでして俺に見せまいとする! そうだてっきり[#「てっきり」に傍点]あの品物だ! これよこせ[#「よこせ」に傍点]! これ見せろ! ……昨夜《ゆうべ》も昨夜だ、深夜に帰って来て、俺の言葉をごまかしてしまって、あるともないとも品物について、ハッキリした返事をしなかった。……で、今日は昼からやって来たのだ。……と、どうだろう手代をけしかけて[#「けしかけて」に傍点]、あいつ[#「あい
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