郷の長でござる。何用あって参られたか?」
こう四挺の駕籠に向かって云った。
と、その声に応じて一挺の駕籠から、一ツ橋|慶正《よしまさ》卿が悠々と現われ、もう一挺の駕籠から碩寿翁が現われ、もう二挺の駕籠から老人と美女――他ならぬ刑部《おさかべ》老人と、巫女《みこ》の千賀子とが現われた。
そうして一ツ橋慶正卿が、何やら将監へ囁いた。
と、形勢が一変した。
郷民達が慇懃《いんぎん》になり、一度に揃って慶正卿へ、ひざまずいて頭を下げたりした。将監においても丁寧になり、恭しく慶正卿に一礼し、それから自身が先頭に立って、回教寺院めいた建物の側の、一宇の屋敷へ案内した。それは将監の屋敷らしかった。
ところで碩寿翁と刑部老人と、巫女の千賀子とはどうしたかというに、これも将監に案内されて、慶正卿につづいて将監の屋敷へ、同じく招待されたのであった。
で、その後は白河戸郷は、以前《まえ》ながらの平和に帰ったが、その平和には活気があって、明るさを加えたようであった。
これに反して丹生川平の方は、陰鬱の度を加えて来た。
わけても陰鬱になったのは、宮川茅野雄その人であって、ある日人目を避けなが
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