の下にあるのは、真に美しい鯖色の光を、ギラギラと空へ投げている、そう云う品物を底に蔵した、例の小さい箱であった。
しかるにこの時隣りの部屋で、囁き合っている男と女があった。
「今夜こそどうでも取らなければならない」
こう云ったのは男であった。
すると女が囁き返した。
「そうとも、どうしても取らなければならない」
「眠っているだろうか? 起きているだろうか?」
「そっと襖をあけてごらんよ」
「何となく俺には恐ろしい。碩寿翁様が相手だからな」
「と云ってうっちゃっては置かれないよ。……ここまで尾行《つけ》て来た甲斐《かい》だってないよ」
「それにしてもどういうお考えから、碩寿翁様には飛騨などという、こんな山国へ来られたのだろう?」
「私達には関係《かかわり》はないよ。……襖をあけて覗いてごらんよ」
ここの部屋には燈火《ともしび》がなかった。
で、二人の男と女の、姿を見ることが出来なかった。
が、もし燈火があったならば、囁き合っている男と女が、夕暮時に柏屋の門《かど》へ、二挺の駕籠を並べてつけ、揃って奥へ通って行った、老人と若い美しい、女とであることが見て取れたであろう。
しか
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