ているらしい。
(若い女子《おなご》を悪者が、誘拐《かどわか》そうとしているのであろう)
 こういう場合の常識として、ふと茅野雄はこう思った。
(ともかくも行ってみることにしよう)
 で、茅野雄は小走った。
 と、その時丘を巡って、一人の女を小脇に抱えた、逞しい武士が現われたが、茅野雄の方へ走って来た。

弦四郎の心! 茅野雄の心!

 と、見てとった宮川茅野雄は、立ち向かうように足を止めた。
 と、女を小脇に抱えた、逞しい武士は走って来たが、腕前に自信があるがためか、傍若無人の心持からか、遮った茅野雄を無視するように、避けもせずに駆け抜けようとした。
「待て!」
「邪魔だ!」
「こ奴、悪漢!」
「よッ、貴殿は宮川氏か!」
「どなたでござるな?」
「醍醐弦四郎でござる!」
「これはいかにも醍醐氏であったか!」
 いつぞや江戸の小石川の、松倉屋勘右衛門の別邸の前で、弦四郎に突然に切りかけられた時には、月こそあったが夜であったので、醍醐弦四郎の顔や姿を、ハッキリと見ることは出来なかった。
 で、今、こうやって邂逅《いきあ》った時にも、早速には逞しいこの武士が、醍醐弦四郎であることは気がつか
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