点]縛る」
「おお恐々《こわこわ》!」と大仰に云ったが、妾のお蔦は寄り添うようにした。「でも殿様に似合うのは、そういう風じゃアありませんわね」
「河東節の水調子 ※[#歌記号、1−3−28]二人が結ぶ白露を、眼もとで拾うのべ紙の――などと喉《のど》をころがして、十寸《ますみ》蘭洲とどっちがうまい? などと云っている俺の方が仁にあうと云うのだろう」
「そうよ」とお蔦はトロンコの眼をした。「※[#歌記号、1−3−28]梛《なぎ》の枯れ葉の名ばかりにさ。……殿様、今夜は帰しませんよ」
「まてまて」貝十郎は大小を取った。「与多《よた》は与多、仕事は仕事だ。……俺はちょっくら行って来る」
「どちらへ?」
 と驚いて止めるお蔦を、ちょっと尻眼で抑えるようにし、「お前を相手に割白《わりせりふ》か何んかで、茶化したことばかり云っていて、それで暮らして行けるなら、とんだ暮らしいい浮世なんだが、まるっきり逆の世間でな」
「遊んでおいでなされても、役目は忘れないとおっしゃるのね」
「それくらいなら御《おん》の字だ。遊びを役目の助けにしている――と云う荒っぽい時世なのさ」
 妾宅を出ると貝十郎は、露路の突きあ
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