「そこでちょっかい[#「ちょっかい」に傍点]を出そうと云うのね」
「うっかりちょっかい[#「ちょっかい」に傍点]を出そうものなら、あのお妾さんくらいつくよ」
「鬼や夜叉じゃアあるまいし」
「それ以上に凄い玉《たま》かもしれない。顔に険のある女だった……旦那というのはどんな男かな?」
「旦那だか何んだか知らないけれど、時々駕籠で立派なお武家さんが深夜においでなさるようです」
「他にも男が出入りするだろう?」
「よくご存知ね。四、五人の男が……」
「物など持ち運んでは来ないかな?」
「おや、そう云えばそんなことも……でもどうしてご存知なんでしょうね?」
「俺の身分を知っているくせに、何を云うのだ。うっかりした女だ」

        二

「そうそう旦那は与力衆でしたわね」
「今後は殿様と呼ぶがいい」
「結城ぞっきのお殿様ね」
「文句があるなら唐桟《とうざん》でも着るよ」
「いいえ、殿様と云わせたいなら、黒羽二重の紋服で、いらせられましょうとこう申すのさ」
「そういう衣装を着る時もある。が、その時には同心が従《つ》く」
「目明し衆も従くんでしょうね」
「お前なんかすぐふん[#「ふん」に傍
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