十二神貝十郎手柄話
国枝史郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)髻《たぶさ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)田沼|主殿頭《とのものかみ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#歌記号、1−3−28]
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ままごと狂女
一
「うん、あの女があれ[#「あれ」に傍点]なんだな」
大|髻《たぶさ》に黒紋付き、袴なしの着流しにした、大兵の武士がこういうように云った。独り言のように云ったのであった。
そこは稲荷堀の往来で、向こうに田沼|主殿頭《とのものかみ》の、宏大の下屋敷が立っていた。
「世上で評判の『ままごと女』のようで」
こう合槌を打つものがあった。旅姿をした僧侶であった。
「つまり狂人《きちがい》なのでありましょうな」
これも単なる問わず語りのように、こう呟いた人物があった。笈摺《おいずる》を背負った六部であった。と、その側に彳《たたず》んでいた、博徒のような男が云った。「迫害されて成った狂
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