たりの家の前まで行った。が、そのまま姿が消えた。

「手頼《たよ》りない身でございますの、これをご縁にどうぞ再々、お遊びにおいでくださいましてお力におなりくださいますよう」
 お蝶はこう云って京一郎の顔を、艶めいた眼でながしめに見た。年は二十一、二でもあろうか高い鼻に切れ長の眼に、彫刻的の端麗さをそなえた、それは妖艶な女であった。
「はい、有難う存じます。妙なことからお目にかかり、飛んだおもてなしにあずかりまして、何んと申してよろしいやら。……ご迷惑でなければこれからも、ちょいちょいお伺いいたします」
 京一郎は恍惚《うっとり》とした心で、こう云って頬を掌で撫でた。五人の男に追いかけられ、それが因になって飛び込んだ家の、女主人にこんなに愛想よく、迎えられようとは思わなかった。
 茶を出され酒を出され、身の上話さえされたのである。両親のない身の上ながら、親が残して行った金があるので、女中と婆やとを二人ほど使い、男気のない女世帯を、このようなひっそりした町の露路で、しばらく前から張り出したが、その男気のないということが、何より寂しいと云うのであった。
 父は生前は長崎あたりの、相当名を知ら
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