ていた。

        八

 この頃小梅の柏屋の寮を、取り囲んでいる人影があった。目明し、橋場の仙右衛門が、同心佃三弥に指揮され、乾児《こぶん》十二人と一緒になって、捕り物をすべく囲んだのであった。
 不意に深夜の静寂を破り、男の悲鳴が家の中から聞こえ、つづいて騒がしい人声が起こり、つづいて雨戸を蹴開く音がし、すぐに男女の人影が、裏木戸の方へ走って来た。
「御用!」
「何を!」
「勘助御用だ!」
「仙介か! ……やっぱり……岡っ引だったな!」
「やい、神妙にお縄をいただけ!」
「…………」
「夜叉丸! 手前も……年貢の納め時だ!」
「馬鹿め! 人足! 捕れたら捕れ!」
 小間使いお菊の女勘助と、大日坊の火柱夜叉丸とは、戸を蹴破って飛び出した。
 ご用聞きの仙介に身をやつしていた、目明しの仙右衛門は飛びかかった。ガラガラという錫杖《しゃくじょう》の音! 月光に閃めく匕首の光! ムラムラと寄せ、ガッと引っ組み、バタバタと仆される捕り方の姿! 枕橋の方へ一散に走る、夜叉丸と女勘助との姿が見えた。
「廻れ! 右の方へ! 三囲《みめぐり》の方へ!」同心佃三弥が叫んだ。
「旦那、冗談、そんな
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