い貴公子なのさ。自分の力を自分で過信し、勝手に幻影を描いている方さ。……名古屋の富豪を呼びつけて金を出せと偉そうに仰せられたが、出す奴なんかありゃアしないよ」
「今夜集まって来た浪人者なんか、食いも慣らわないご馳走を食い、かつてなかった待遇を受け、いい気持ちに大言壮語して館林様を讃美しているが、明日になって自分の古巣へ帰ると、古巣の生活を後生大事に守り、館林様が事を挙げたって、一人だって従いて行きはしないよ」
「俺らにしてからがそうだろう、神道徳次郎、火柱夜叉丸、鼠小僧外伝、いなば[#「いなば」に傍点]小僧新助、女勘介、紫紐丹左衛門、こう六人揃っていたって、心からあのお方に従いて行こうと、そう思っている者はないのだからなあ。……女勘介、お前はどうだ? お前の方の仕事はどうなっている?」
「ああ俺らの例の仕事か、俺らあいつは止めてしまった。丸田屋が寝返りを打った場合、苦しめてやる手段として、一人息子の珠太郎を、誘拐して監禁してしまえという、館林様の吩咐《いいつ》けだったので、そのつもりで骨を折ったんだが、こういう仕事には飽き飽きしている俺だ。投げ出してしまったよ、止めてしまったよ」
館
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