んの死んだ日だったね。……そうだ諸人接待の日だった。……私はこの日が来る度ごとに、鞭撻されるような気持ちがする。いやいや鞭撻されようために、今日を諸人接待の日に、取り決めたのだと云った方がいい。……兄さんは死ぬ前に私にあてて、気の毒な手紙をよこしたのだよ。悲痛の手紙と云ってもよいが。……お前は向こうへ行っておくれ。……ああ少し待っておくれ。接待に来てくれた人の中に、変わった人があったかしら?」
「いいえ」とお豊の云う声が聞こえた。「でも猪之助が来ていました」
「猪之助? おお猪之助が。……あの破落戸《ごろつき》が! 執念深い! ……兄の悪口を云っていたであろうな」
「ええ申しておりました」
「去年も来た、一昨年《おととし》も来た。……普通の日にもやって来て、私を強請《ゆす》ったことさえある。……あいつは誤解をしているのだ。……いやいやいや、誤解ではないが。……お豊や、私は気持ちが悪くなった。お前は向こうへ行って休むがよい」
ここでしばらく話が絶え、やがて足音が聞こえて来た。貝十郎は身を翻えしたが、素早く廊下を右の方へ走り、闇に立って窺った。と、すぐにお豊の姿が、戸口から出て庭の方へ行
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