る貝十郎にも見て取れた。畳が敷いてないのである。板張りになっているのである。
(お豊とそうして隼二郎なのか。……いや、腕の凄い女ではある。あっちの庭では年の下の、美少年と媾曳をしたかと思うと、こっちの部屋では年の上の、金持ちの旦那を口説いている、同じ晩にさ、わずかの時間にさ。……あんな女は都会にも少ない。どうにも俺は田舎が嫌いだ)

        七

 この時隼二郎の声が聞こえた。
「杉田玄伯殿、前野良沢殿、あの人達と約束したのだよ、私の方が早く仕とげて見せると。……江戸でああいう人達と一緒に、研究していた頃は面白かった。……後見人となってこの家へ入り、木曽山中のこんな所で、くらしをするようになってから、私には面白い日がなくなってしまった。……お前が来てからそうでもなくなったが。……さあ私《わし》はやらなければならない。……さあお前はあっちへ行ってお休み。……あの娘が眼でも醒ますといけない。……私《わし》はあの娘《こ》を愛している。……どうもあの娘には誘惑が多い。……無理はないよああいう身分だから。……あの娘《こ》を幸福にしてやることが、死んだ兄さんへの大切な義務だ。……今日は兄さ
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