使いや、晴衣をまとった侍女などが、出たりはいったりして酒や馳走を、次から次と持ち運び、酌をしたり世辞を振り蒔いたりしたが、隼二郎とお三保とは出て来なかった。燭台が諸所に置かれてあり、それの光が襖や屏風の、名画や名筆を華やかに照らし、この家の豪奢ぶりを示していた。
客の種類は雑多であった。村の者もいれば隣村の者もおり、通りがかりの旅人もいれば、接待の噂を聞き込んで、馳走にあずかりに来たものもあった。僧侶の隣りに浪人者がいたり、樵夫《きこり》の横に馬子がいたりした。
「お武家様おすごしなさりませ。妾《わたくし》、お酌いたしましょう」不意に横から云うものがあった。
「うむ」と貝十郎はそっちを見た。
いつの間にそこへ来ていたものか、山深い木曽の土地などでは、とうてい見ることの出来ないような、洗い上げた婀娜《あだ》な二十五、六の女が、銚子を持って坐っていた。三白眼だけは傷であったが、富士額の細面、それでいて頬肉の豊かの顔、唇など艶があってとけそうである。坐っている腰から股のあたりへかけて、ねばっこい蜒《うね》りが蜒っていて、それだけでも男を恍惚《うっとり》させた。
「これは……」と貝十郎は思
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