わず云ったが、釣り込まれて盃を前へ出した。
「はい」と女は上手に注いだ。
キュッと飲んで置こうとするところを、
「お見事。……どうぞ、お重ねなすって」
云い云い女は片頬で笑い、上眼を使って流すように見た。
「では……」「はい」
「これはどうも」「駈け付け三杯、もうお一つ」「さようか」「さあさあ」「こぼれましたぞ」
「これは失礼。……ではその分を……」「え?」
五
「いいえさ、今度こそ上手に、ホ、ホ、散らぬようお注ぎいたします」
「うーん、どうもな、大変な女だ」
「まあ失礼な、お口の悪い」
「いやはや、ご免、地金が出ました」
「今度は罰金でございます」
「と云うところでもう一つか」
「それもさ、今度は大きい器《うつわ》で」
「これは敵《かな》わぬ」「敵わぬついでに」
「降参でござる。もういけない」
「では妾《わたくし》が助太刀と出ましょう」
「おお飲まれるか、これは面白い。……さあさあ拙者が注ぎの番か」
「はい、ご返盃」「あい、合点」
「ねえお武家様」と女は云った。「江戸のお方でございましょうね」
「ナーニ、奥州は宮城野の産だ。……そなたこそ江戸の産まれであろうな
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