嬪《べっぴん》でございましょうがな」
(厭な奴だな)と貝十郎は思った。で、黙って男を見詰めた。
「三保子様は別嬪でございますとも」自信がありそうに若い男は云った。「云わば花野の女王様で」
(こいつ馬鹿だ!)と貝十郎は思った。(でなかったら色情狂だ)
「それに大層もない財産家で」
(おや、こいつ、慾も深いぞ)貝十郎は降参してしまった。
(山の中へ来ると変な奴に逢うぞ)
「お武家様、あなた見ていましたね」

        三

「何を?」と貝十郎は不愉快そうに訊いた。
「私と三保子様との恋三昧をでさあ」
「…………」
「旦那、邪魔をしちゃアいけませんぜ」
「貴様は誰だ!」
「鏡太郎って者だ!」
(ふうん、こいつが鏡太郎なのか)改めて貝十郎は鏡太郎を見た。
 ベロッとした顔、ベロッとした姿、――そういう形容詞が許されるなら、鏡太郎はそういう顔と姿の、持ち主と云わなければならなかった。つまり甞めたような人間なのであった。甞めたように額がテカテカしており、甞めたように頤がテカテカしていた。衣裳などでもテカテカ光っていた。都会の軟派の不良青年――と云ったような仁態であった。しかし太々しい根性は、
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