は灌木を巡り、横手の方から前の方を見た。紅い帯を結んだ初々しいお三保の姿――背後《うしろ》姿が見え、その前に立っている痩躯長身の、四十年輩の男の姿が見えた。蒼白い顔色、黒い頤鬚が、陰険の相をなしていた。落ち窪んだ眼窩の奥の方で、瞳がチロチロ光っていたが、それも人相を深刻にしていた。
(これは大変な怪物だぞ)貝十郎は眉をひそめた。(俺に取っても強敵らしいぞ)
 隼《はや》二郎はお三保に何か云っていた。しかしきわめて低声だったので、貝十郎へは聞こえなかった。と、二人は歩き出した。そうして間もなく見えなくなった。
 行く手に小広い野があって、丘がいくつか連らなっていたが、その丘の向こうに征矢野《そやの》の屋敷が、どうやら立っているようであった。
(さて、これからどうしたものだ)貝十郎は思案した。
(とにかく征矢野家まで行って見ることにしよう)しかし十歩とは歩かなかった。
「もし、お武家様、お待ちなすって」こう背後《うしろ》から呼ばれたからである。振り返った貝十郎の眼の前にいたのは、二十四、五歳の若い男であった。
「何か用かな」と貝十郎は訊いた。
「へい」と若い男はニヤニヤ笑った。「あの娘、別
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