ように、振りかえってそうわたしにおっしゃいましたのは、十間ほど進んだ時でした。
わたしはすぐに地へ寝ました。
寝たまま見ている私の眼の前を掠めて、二人の男が木蔭から飛び出し、左右から豹のように国臣様を目がけて、組みついて行くのが見てとられました。
つづいてわたしの眼に見えましたのは、飛鳥のように国臣様が飛び退き、瞬間片足を蹴上げたことと、それに急所を蹴られたのでしょう、一人の男が呻き声をあげて、あおのけざまに仆れたことと、しかしもう一人の男の方が、もうその時は国臣様の体へ、背後《うしろ》からしっかり組みついたことと、でもその次の瞬間に、その男は振りはなされ、振りはなされたとたんに国臣様によって、おそらくあて[#「あて」に傍点]身をくわされたのでしょう、これも呻き声をあげながら、地に仆れたことでした。
「重助来い!」
「へい」
「向こうだ!」
木立のあなた遙かの向こうに、ぽっと火の光が射していましたが、その方へわたしたちは走って行きました。
千木のたててある建物が立っていて、その門の戸があいていて、そこから火の光が射していて、その前に十数人の人影がいて、何やら叫んでおります姿が
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