犬神娘
国枝史郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)午《うま》の刻
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)新関白|近衛《このえ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)叱※[#「口+它」、第3水準1−14−88]して
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一
安政五年九月十日の、午《うま》の刻のことでございますが、老女村岡様にご案内され、新関白|近衛《このえ》様の裏門から、ご上人《しょうにん》様がご発足なされました際にも、私はお附き添いしておりました。(と、洛東清水寺|成就院《じょうじゅいん》の住職、勤王僧|月照《げっしょう》の忠実の使僕《しもべ》、大槻《おおつき》重助は物語った)さて裏門から出て見ますると、その門際《もんぎわ》に顔見知りの、西郷吉之助様(後の隆盛)が立っておられました。
「吉之助様、何分ともよろしく」
「村岡様、大丈夫でごわす」
と、二人のお方は言葉すくなに、そのようにご挨拶なさいました。その間ご上人様にはただ無言で、雲の裏に真鍮《
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