でもねえ奴らだ料ッてしまえ!」
「合点だ、やれ!」
「やれやれやれ!」
八五郎、権六、〆松、峯吉、無法者の四人の乾兒達も、そう叫ぶと脇差を一斉に抜いた。
親分猪之松と林蔵とが、二人ばかりの果し合いに、今も白刃を構えている[#「構えている」は底本では「構えるている」]、親分の命で手出しが出来ない、謂う所の脾肉の嘆! それを喞っていた折柄であった。切り合う相手が現われた。理非曲直《りひきょくちょく》は二の次である、血を見ることが出来、切り合うことが出来る、これだけでもう満足であった。
「やれやれ!」と喚きをあげながら、主水と澄江とを引っ包み、無二無三に切りかかった。
主水は驚き怒ったが、妹澄江を背後に囲うと、
「やあ方々理不尽めさるな、我等は主君よりお許しを受け、免状までも頂戴致し、公に復讐に参ったものでござる! 怨敵は水品陣十郎、その陣十郎をお助けなさるとは、伊達衆にも似合わざる無道の振舞、お退き下され、ご見物下され!」
必死の声でそう叫んだ。
と、姦物陣十郎は、鷺を烏と云いくるめる侫弁、
「あいや方々|偽《いつわり》でござるぞ、彼らの言葉をお信じ下さるな。免状を持った公の復讐
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